時が磨き、
無駄を削ぎ落とした美しさ
を伝えたい。
現在、三味線演奏家として国内をはじめ海外でもご活躍されている穂積大志さん。
和楽器の持つ伝統芸能のイメージからすると意外にも、過去にSE(システムエンジニア)としてのご経験を持つ異色のキャリアの持ち主。
少年時代からの夢だったという楽器演奏に、プロの演奏家として携わるまでのエピソードをはじめ、現代において三味線に触れ、楽しむためののヒントをうかがいました。
「楽器を弾きたい」と夢を抱いた少年時代
ー幼少期から三味線に馴染みがあったのでしょうか?
それが、全く無かったんですよね(笑)。
後になって、温泉街(福島県二本松市)に住んでいた祖父が、そこの芸者さんが弾く三味線が好きだったという話を聞いたり、母が娘時分に箏を弾いていたという話を聞いたりはしたのですが、私自身はその姿を見たことも無く、子供の頃に和楽器との接点は全く無かったんです。
ただ、「楽器を弾きたい」という夢はずっと持っていました。
子供の頃には、なかなか自分で楽器を買ったり習ったりすることも出来ず、楽器に触れる機会もあまりなかったのですが、大学で箏と三味線と尺八の演奏をしている箏曲部に所属するようになったんです。
そこでは、主に上方を中心に発展した三曲※や地歌箏曲を弾いていました。
三曲:地歌三味線(三弦)、箏、胡弓の三種の楽器の総称。またはそれらの音楽である地歌、箏曲、胡弓楽の総称。後に尺八が加わった。
ー和楽器を選んだ理由は?
楽器を弾きたいという想いはずっとあったのですが、今さらピアノやギター、ブラスバンド等で経験者に混じるのもどうかと思っていたところ、大学の箏曲部では大学で初めて楽器に触れる初心者がほとんどだったので、入りやすかったところもあると思います。
ー三味線に触れて魅力に感じたところは?
やはり「サワリ※」に代表される特徴的な音色でしょうか。例えば西洋の弦楽器だと、他の楽器とのアンサンブルやハーモニーを優先して、楽器から出るノイズを消すことを追求する志向がありますが、三味線の場合は意図的にノイズが付くように設計されています。
同じような構造は琵琶等にも見られますが、「サワリ」により倍音を増幅し「音が立つ」工夫がされているのです。
サワリ:演奏時に、「一の糸」(三本の弦の中で最も太い弦)が三味線にかすかに触れながら振動することで生み出されるノイズのこと。
また、奏法も非常に特徴的で、弦楽器の要素と同時に打楽器の要素が合わさったところがあり、他の楽器には見られないその音の魅力は、もっと世界にアピール出来るものだと感じています。